おかえりモネ 十年後
紅白のおかえりモネ
モネを演じた清原果耶さん、菅波先生を演じた坂口健太郎さんが見守る中、BUMP OF CHICKENがあの砂浜で歌い、あの日行われなかった吹奏楽部の演奏会が十年後の彼らによって行われ、それを登米と東京からサヤカさんたちと菅波先生が遠隔で見ているという構造があまりにもあまりにも美しくて、画面がぼやけて大変でした。
ありがとうありがとう。
十年後の彼らは様々な思いを抱えてきながらも、この瞬間は楽しそうに演奏をしていて、きらっきらに輝いていました。
私達が見たかったおかえりモネの素晴らしいアンコールでした。最高の年末でした。
カムカムエヴリバディ 雉真勇考察もしくは当て馬に見せかけたなにか
雉真勇は安子編のダークヒーローなのか?
安子編が終わり、安子というヒロインが何も成し遂げられないままアメリカへ去ったのを見て、ちょっと魂が抜けた思いがするのだが、それ以上に雉真勇という男は一体なんだったのか…という疑問が次々と湧いてくる。
とりあえず雉真勇という複雑怪奇なキャラに村上虹郎をあてたことはカムカムスタッフの大ファインプレイだと思う。彼はこの厄介な男に息を吹き込み、最後まで視聴者を見事に欺いてみせた。
そう、彼は欺いたのだ。
前回の「おかえりモネ」でりょーちんが、ヒロインに尽くすだけ尽くして去っていった幼馴染たちの恨み(笑)を晴らそうとしてるのではと思ったこともあったが、勇はさらにそこから一歩踏み込んでヒロインだけではなく、視聴者にまで一太刀浴びせていったのである。あっぱれな太刀筋であった(ばたり)。
勇自体は、悪人ではない。野球チームのメンバーにはおそらく好かれているし、親子仲も兄弟仲も悪くない。安子に対しては、あだ名をつけたりしてからかったりしてはいるものの、まあまあ少女漫画や恋愛ドラマではありがちツンデレの範疇に見えなくはない。
だか、ところどころ彼には不穏な態度が見られるのは気になっていた。
両親が明らかに長男で出来の良い跡取りの稔を、自分より大事にしていることが引っかかっているようだった。稔が帰ってきたときの美都里の態度に、自分との違いを指摘していたし。
これも当時の長男と次男の扱いの違いからそう考えるのも無理はないだろう。だけど、当時、次男がぞんざいに扱われることを当たり前だからといって、その人が傷つかないかどうかは別である。勇の中に本人も気づかないまま澱のようなものが貯まっていっても仕方ない。
安子が稔とお祭りデートしたとき、稔がいなくなった隙を見計らって、安子に稔は相応しくないと二人の仲を裂こうとしたあたりでおや? と思った。
安子の気持ちも確認せず、いきなり告白して抱きしめたり、かなり自己中心的な行動を取るなあと思った。彼の行動自体は、恋愛ものなら割とありがちだし、情熱的だと評することもできるギリギリのラインだろう。
結局、勇は稔と安子の件は、それでもなんとか自分の中で諦めて、二人を応援することができるようになったときはこれで彼も一つ成長出来たはずだったのだが。
安子編でいろんなものが狂ってしまったのは、稔の死だ。
稔の死によって、勇にとっては本人の自覚がないままずっと欲しかったであろう両親の愛情と期待を集める長男のポジション、これが転がり込んだのである。それは同時に、兄嫁である安子の人生もまたコントロールできるポジションなのだ…。
安子編で描かれた雉真家は、典型的な家父長制に支配された家である。
勇はその家父長制ではどれだけ頑張ろうとも大事にしてもらえなかった。素直で真っ直ぐな気のいい男ではあるけれど、それはそうでないともっと大事にしてもらえないことを本能的に察していたのではないか。
彼の持つ典型的な男らしさは、彼の心の奥底にある闇を上手く覆い隠していたのではないか。
思い返せば、勇はよく安子の店番をするたちばなに来て、チームメイトに和菓子をおごっていた。太っ腹で面倒見のいい行為ではあるが、そうすることで彼はどこかで愛されることに対して打算的なものを感じていたのではないだろうか…*1。
安子が大阪から帰ってきてから、アレほどタイミングが大事だと強調されていた小豆を煮ている最中に、勇が声をかけている描写が挿入されていた。勇は安子が好きだといいながら、彼女が本当に大事にしているものが見えてなかった。
彼が千吉から勧められ、プロポーズをしたとき、安子はいつもの小豆のおまじないを英語で唱えていた。しかし、勇は全くそのことに気づいてなかった。つまり彼は、安子のおまじないをきちんと聞いていなかったということになる。
このあたりから、彼の本当の人となりが見えてきたのではないか。
勇は、家父長制の割りを食って大事にされなかったからこそ、家父長制の恩恵を受けるようになった途端、「支配と従属」で人と接するようになってしまったのだろう。それが向けられたのは家の中で弱い立場である雪衣なのは当然のことかもしれない。
いや、それにしても37話で雪衣の妊娠発覚で、一気に勇への評価が「朝ドラお馴染みの健気にヒロインに尽くし続ける幼馴染の男の子」から「ヒロインに結婚を申し込みながら女中をセフレにしていたただの不誠実な男」にひっくり返ったのは見事である。
──ちなみに、敢えて雪衣との関係に妊娠という結末をつけたのは、これは視聴者に対して、家父長制の一見良識的に見える歪みを分かりやすく提示するためだったと思うし、物語としてきっちり否定しておかないといけないことだったからじゃないかなあ。
つまり、「自分のことを一途に思う相手と再婚することは子供にとっても幸せである」
という良識という名の同調圧力を潰さないといけなかったからじゃないだろうか。
勇にところどころ見られた安子に対する引っかかる態度は、雪衣の扱いで腑に落ちたのだけど、村上虹郎の熱血野球バカな気のいい兄ちゃんっぷりの演技にすっかり騙されたのである。安子編の影の主人公だったと言ってもいい。あなたが犯人です。
さて、るい編の最初で、彼の家族のひんやりとした雰囲気からすると、勇は雪衣との間に子供ができちゃったのが唯一の失敗だったぐらいに思ってそうなんだよなあ。
雪衣が冷ややかなだけではなく、実の息子である昇も父親に対して「葬式が始まるまでに勉強しておきたい」と答える。おそらく野球に興味がないだろうことが一発で分かる秀逸なセリフだ。勇が子供を可愛がらないとは思えないのだが、昇の態度からして、一体どういうやり取りがなされてるのか気になるところである。
るいもまた、キャッチボールにはつきあってくれてるものの、高校は中退してしまっているし、金銭的な援助も断っている。雉真家絶対頼りにするもんかウーマンになってるし、勇に対しても表面的に愛想よくしてるだけに見える。
ここまでくるとさすがに勇が気の毒なのだが、雉真家はこのまま退場なのかなあ…。
せめてどこかで、どうしてこうなったんだろうと思ってるだろう勇に、答え合わせをしてあげてほしいと思う。
あまりにもこのままでは雉真家に救いがなさすぎるのよね……。
*1:安子は早くから勇に対してミリも愛情を持ってなかったのは、勇の好意の示し方が彼女には本能的に受け入れられないものだったのかもしれない
カムカムエヴリバディ るい編 40話
宇宙人襲来
OPのキャスト
宇宙人 オダギリジョー
にすべてを持っていかれた。かにーかにーかにー。
さてさて、るいは流れるようにクリーニング店に住み込みで働くことに。
このときに見えたるいの履歴書によれば、高2で中退してるとのこと。
平助さんの言葉から、中退してても就活に影響はなさそうなのは、女性の学歴が重視されない時代らしいけど、卒業まで待たなかったのは、雉真の家を出たくて出たくてしょうがなかったんだなあ…。勇とはキャッチボールしていたけど、本心では心を許してなかったのがこの設定からわかる。
和子さんがクリーニングの洋服から、お客さんの事情を色々察して見せていたけど、るいが早速想像を広げていたのが興味深い。それも、双子のコートについた犬の毛から、犬と子どもたちの微笑ましい風景を想像していたあたり、ひねくれて育ったわけではないのはほっとする。
ってところでオダギリジョーもとい宇宙人登場である。
しかしお客の名前を聞きそこねたってだけで、洋服に宇宙人と刺繍しちゃっていいのか…?
カムカムエヴリバディ るい編 39話
奇跡の18歳
さあるい編が始まりましたよー!
いきなりスタートは喪服姿というるい。それだけで「雉真家の生活はずっとお通夜でした」っていうのが分かるようになってる。
千吉は安子とるいを引き離していたことを今際の際まで後悔してる模様だけど、安子がなぜるいを置いてアメリカへ行ってしまったのか分かってない上に、まだ「あんこ」呼びしてる勇に「とほほ…」という言葉が漏れた。
一方、雉真家の空気も冷え冷えー。
義父の葬式を控えていながら、朝ドラ「娘と私」の最終回を観ている雪衣*1。葬式までの間、勉強に没頭している昇*2。
このしらーっとした家族の姿を見るに、雪衣はそもそも勇のことを好きじゃなかったのではないか。
勇の(なんでこうなったん?)って顔。誰かちゃんとなぜこうなったか説明してあげてほしい。
雉真家はこれで退場なんだろうか。勇の自業自得とはいえ、今後なんらかのフォローがあるといいんだけどね。
という雉真家から出て大阪へ来た途端、るいが踊りだした! 分かりやすい(笑)
すったもんだのあげく、村田雄浩・濱田マリ夫婦のお茶の間を囲むことになったるい。
お世話になる夫婦としてはSSSRである。間違いない。
笑い声の響くお茶の間で涙をこぼするいに、やっと彼女が自由に息ができる世界を手に入れたのだなあとほっと安堵した。
カムカムエヴリバディ 安子編→るい編 38話
闇落ちピタゴラスイッチ
情報が多すぎてこんな感じ。
予告見たとき、これ一週間でやれるー? と思ったんだけど、まさかここまでギチギチに詰め込んで、かつ色々納得が行く展開になるとはびっくり。
とりあえず一人ずつ行こう。
安子
彼女については批判があるのもしょうがないけど、ただ目の前のやりたいことをやってきただけなんだよね。英会話にしろ、おはぎにしろ。
稔さんから自分の好きなこと興味があることに没頭するのはとても楽しい、と教えられて以来、彼女はただ好きなことをやりたいと思って行動してきただけ。
だけど、好きなもの、大事なものが増えてきたら、それを全部やろうと思ったらどうしたって無理がでる。
稔さんがいれば、彼女のやりたいことを上手く交通整理してくれたかもしれない。橘の家族がいれば、自分がやらなければと思う気持ちもそれほど強く思わなかったかもしれない。
るい、たちばなの再興、英会話、ロバート。全部は無理だった。
やりたいことがたくさんあるとき、どうしても優先順位をつけなければいけないが、そこに人間、特に子供が入ってくると順序は狂う。
安子はもういっぱいいっぱいだった。彼女は何度も倒れていたけどそれはなすすべがなく、何も選べなかったからだ。
稔さんが戦争で死んだとき、安子は本当は全部うっちゃって、一人でどこかに行きたかったのかもしれないとロバートに「アメリカへ連れて行って」と叫んだときに思った。
いくらるいから拒絶されたからと言って、娘を置いていくだろうかと思うけど、今の安子は娘の怒りの感情を受け止める気力がなくなっちゃってたんだろうなあ。母親とて一人の人間だからね…。
勇
たった2話で株が暴落した男。
おちょやんの一平とやらかしたことは同じだけど、千代に土下座しただけやつのほうがマシだったかもしれん…*1。
昨日は雪衣とのアレは初犯だろうと思ったけど、初犯じゃなかったーーー。貴様ーーー!!!
勇と雪衣の件は、「勇はずっと安子を思ってきたのだし、稔さんへの義理はあるだろうけど、娘のために彼と結婚して雉真家の奥様に収まるほうがいいのではないか」という女がわきまえれば場は丸く収まる、という「良識的な」意見*2に対するカウンターがちゃんと用意されてたってことだと思う。
ずっと薄々、勇にとって安子はトロフィーなのではないかという感想が拭えなかったけど、雪衣と肉体関係を持っていたということで、勇の安子への感情は愛情ではないよなあ…。本人は恋愛感情だと思ってるだろうけど。
まあしかし、勇という人物が単なる熱血バカではなく、次男故にいろいろこじらせたものも抱えた、かなり複雑な内面を持ったキャラだということが分かった。演じてる村上虹郎さんの演技力には脱帽である。勇に関しては完全にやられました。*3
雪衣
本当にええんかその男で。
ロバート
大阪でも岡山でも、安子が倒れた途端登場するので、あさイチで「二人いるのでは」と突っ込まれた男。
ロバートはいいところしか見せてないので本当に彼に付いてアメリカへ行くのが正しいのかなんとも言えないのだが、「あなたはあなた自身の幸せを求めるべき」「あなたはそういう人だ」と安子が欲しい言葉をちゃんとくれるんだよなあ。
きぬちゃん
夫がいて子供がいて両親がいて家がある。ただそれだけで勝ち組に見えてしまう世界。
定一さん親子
本当に帰ってきたのか視聴者の中で審議中になっているが
たくさんの帰還メッセージありがとうございます!
— 前野朋哉 (@maenotomo18) 2021年12月22日
健一は帰って参りました!
そして、安子さん…。#カムカムエヴリバディ
ということなので帰ってきたでいい模様。
るい
深津絵里登場! 仕草がちゃんと18歳の少女で震える。
それにしてもヒロイン同士のバトンタッチが憎悪と絶望って、そんなのあるー?
カムカムエヴリバディ 安子編 37話
闇落ちピタゴラスイッチ
今までなあなあで目をつむっていたり、ぼんやりしていて気がついていなかったり、そういった部分が全部一気に吹き出して、破局を迎えた回でありました。
この回の構成が、勇から安子へのプロポーズの回想から始まることで、より強調されたね。
ただ、算太の金持ち逃げ失踪だけど、一見雪衣への失恋からに見せかけて、実は別の事情があるのではないかという気がする。そもそも持ち逃げするにしてもなぜ大阪という。大阪には彼の昔の知り合いがいっぱいいるだろうし、道頓堀へぶん投げるのは事情が分かってからでもいい。
勇と雪衣の関係については、私は初犯だと思ったけど、最初の雪衣のタメ口から既に何度か関係持ってるんじゃないか説もあり、もしそうならお前ふざけんな旭川に投げ込むぞなので、初犯にしといてほしい気持ち。
安子は安子で、自覚はないけど、たちばなとるいとでたちばなを無意識に取っちゃってるんだよなあ。そこをもっと彼女が自覚してくれてると、やりようもあったんだろうけど、彼女の中には自分が自立して働いてるという気持ちがあまりなかったんだろう*1。
それにしても、安子にロバートさんがいてくれてよかったとしみじみ思う…。
さて、いよいよ38話は安子編クライマックス! いつの間に!
*1:彼女の中にある戦前の教育や常識のせいだろうなあ…
カムカムエヴリバディ 安子編 36話
だろうよかろう事故の元
雉真家の人たちと、安子と、初めにきちんと話し合っておくべきことをずっとなあなあで来てて、さあはっきりと確定させようとしたら、みんな考えてることが全然違っていて、ついに破綻が来てしまった回。
きぬちゃんは背中を押した…というより、安子に自分自身の気持ちをちゃんと考えて腹をくくれってことが言いたかったんだろうなあ。
千吉さん的には、多分安子のおはぎづくりは主婦の趣味ぐらいにしか考えてなかったんだと思う。まさか安子が家を出て自立するとは思ってなかったんだろう。
安子は、帰ってこいと言われたものの、雉真家の中ではすることもなく、ここは自分の居場所ではないという気持ちがずっと強かったのだろう。
千吉さんの指し示す方向は、確かに正しいし、理屈としても通っている。
しかし、ただ「正しい」だけでその道を選べるかどうかは別なんだよなあ。
その「正しい」はあくまで千吉さんの都合のいい正しさだし。
一方の安子も、もっと早くから千吉さんに筋を通しておくべきだったと思う。少なくとも昨日今日の話じゃないし、経済的に世話になっている以上、たちばなの再興と雉真家からの独立は、相談しておけばなあ…という。
もっとも、安子も自分がやりたいことや将来の見通しについて、ロバートに言われて初めて言語化したみたいだからなあ。逆に言えば、ロバートと出会わなかったら、目的も設定せず黙々と英語を学び、おはぎを作ってるだけだったかもしれない。
安子の「おしゃれと甘いものが好きな普通の女の子」の部分が、ここで、足を引っ張る!
勇ちゃんは居酒屋で八つ当たりするのやめような…。