映画/キングスマン:ゴールデンサークル
酷い。
とにかく酷い。
──そして最高だった。
思わず往年のブログのように、太文字にしてしまった。でも、ずっと脳内で監督への罵倒と賛辞を繰り返していた気がする。
以下は被害妄想入ってる感想だけど、マシュー・ヴォーン監督から「ほらほらこういうの観たかったでしょ?」「ほらほらこういうの観たくないでしょ、でも観せちゃう♡」とずっと耳元でドSのように囁かれていたように思う。被害妄想ですよ、もちろん。
でも、コリン・ファースが子犬を抱っこしてるシーン、あれあざといでしょ?*1 あれを大画面でやられた時に、聞こえましたよ監督の高笑いが。ちくしょうめ。ちくしょうめーー(血の涙)
ネタバレ無しで言うなら、悪趣味とあざとさとちょっとばかしの真面目な話と意地悪を全部混ぜてミンチにしてハンバーガーとして出されたのを、顎が痛いと思いながら食べさせられた感じですかねえ。
味はと聞かれれば、美味しかった。ただ万人が美味しいと思うとは限らないかな。ハンバーグにした肉の意味が受付ない人もいるだろうし。美味しく感じた私は悪食なのかもしれない。
ネタバレを避けるために、具体的な内容じゃなくて申し訳なく。
アクションは相変わらずキレッキレでしたね。キングスマンのアクション、やはり好きだなーと思います。んなアホなって動きも多いんだけど、というかむしろその、んなアホなって動きを大真面目にかつかっこよくやってるのが、観ていて快感なんですよね。
予告のドアにしがみついてたエグジーが、前から来た車の上をムササビよろしく飛び越えるシーンとか、うわあ…って気持ちよくなります。それ以外にもいっぱいありますが、ただ、ラスボスのトドメの刺し方までそういう漫画的で躍動感ある舞うような見事な動きで、
「だからそういうところが酷いんだよーーーー!」
と叫ばざるを得なかったのでありますが。ちくしょうめー。
以下ネタバレなので記事たたみます。
今回ショックだったのは、やはり前作で大活躍だったキャラの死ですね……。
えええーってなったのは、JBとロキシーです。JBについては絶対許さん。
ロキシーは……「やばっ」の言葉を最後に、まさかミサイルどかんで退場なんて思わないじゃないですか。前作でロキシーが頑張って地球を救ったというのに。扱い雑じゃない?
……まあ、ジンジャーエールとキャラがかぶるから、退場せざるを得ないというメタな事情はわかりますけどね。あと、この雑い退場からして、もしシリーズ続くなら、あっさり髪をアフロにして再登場しそうですけどね。
あと、マーリンは……。
伝え聞くところによると本当は生きてる設定だったらしいですが、試写会で不評だったから、展開変えたってまじですか。殺しても不評なんだから、だったら殺さなくてもいいじゃないですか。
カントリーロードをこれからどう聴けばいいんですか。家へ帰りたいって歌とともに、エグジーたちを守って爆死とか、そういう、そういう悪趣味は許しませんよ。
ああいうエモい死に方をしてしまったので、ごめん、生きてたでズコーとなるのは分かるので、次回作で生き返ればいいんじゃないかな! 大丈夫、今回のハリーの生き返り方がありなら、次回爆散しても、時間内ならくっつくよ! って、サムライマンあたりが、トヨタ車で乗り付けてればいいんですよ。ジャングルだからわかんなかったで。
はあ……。イケオジの死は堪えるわあ。マーリンロスだわ。FGOもマーリン来ないしさ。
ところで、他の感想サイトで読んで感心したのが、チャーリーの彼女であるクララに発信機をつけるエピソード。
あそこ、普通スパイものなら役得とばかりに喜んで主人公はやっちゃうじゃないですか。映画としてもサービスシーンになるはずですよね。
でも、エグジーは結婚の約束をしてる彼女がいるので、無理って断るんですよね。おまけに彼女に許可取ろうと電話までしちゃう。それで二人の仲がこじれるわけですけど、あそこがとても今時の男の子だなあ~と感心してしまったんですよね。
王女が怒ったあと、クララの背中のゴールデンサークルに気づいてエグジーが任務モードに変わるけど、結局最後まではせずに帰ってるし。なんという義理堅い…。
ここ実際、中の人ことタロン・エガートンも「女優さんに触ることが出来ません」って断ったと聞いて、なんか、お前いいやつだなあと。結局、女優さんの夫君がエグジーの手を演じたそうで、ああそれはいい方法だなとこれは素直に感心しました。
さて今回のメインの話。麻薬の件。
日本は大麻ならOKとかそういうことはなく、とにかく麻薬絶対ダメなので、ちょっと感覚的に分かりにくいかなあ…とは思いました。
ただ、決してお話として麻薬を肯定してはいないんじゃないかな。麻薬の恐怖自体はきちんと描いてるし、ポピーの入れたあれ、あっという間に血を流して死ぬというのは極端だけど、麻薬の常習が結果的に死につながるということ自体は本当のことですしね。
それでいて、ステイツマンがアルコール中毒を生み出してる酒を売ってるとか、こういう皮肉も込められてるところが、単なる善悪二元論で割り切れないという。ポピーや大統領の主張、両極端だけど、共感する人もいそうな意見もきちんと提示してるんですよね。
前作でもそうなんですが、キングスマンが守る対象の人たちって、決して何の悪いこともしていない、真面目な善人として描かれてないんですよね。実はわたしはそこが好きだったりします。
前作のエグジーの母は、仲間を守るために犠牲になることもいとわなかった高潔な夫を持っていた真面目な人ですが、その夫を失った孤独とシングルマザーになったための生活苦から、地元のヤクザ崩れみたいな男に頼り、暴力に怯えつつも逃げられなくなってるんですよね。
今回の王女や大統領の側近の女性は、追い詰められた時に、思わず麻薬に手を出してしまった。
考えてみれば、困窮し追い詰められた状況で、それでも挫けないで悪の誘惑に負けず、正しく生きられる人は強い人なんですよね。
誰かが守らなければいけない人はどんな人かと思えば、たしかに仕事の辛さにふと心弱って、麻薬に手を伸ばしてしまったり、悪い人間だと分かっていても頼らざるをえない、そんな人なのかもしれません。
だけど、誰かを傷つけようとする人間や組織は決して容赦しない。ウィスキーには悲しい事情があるけれど、それでも。キングスマンの行動原理って、そこはちゃんとしてるんですよね。
今回の麻薬の扱いや、王女や側近の女性の行動、ウィスキーの過去、ポッピーの主張や、大統領の判断。人の弱さと罪と罰。映画で提示されたテーマについては、今後も考えていかなければいけないですね。
────と真面目に締めようとしたところで、ポッピーのパスワードが「ヴィ・ラ・ヴィーガン」だったことを思い出して、マシュー・ヴォーンはほんっと性格悪いな!!! と頭を抱えるのでありました。
*1:なお、連れはこのシーンでブルーレイ買おうと決意してたらしい。あんた、いい人だな……。