今日はなにを観た?

映画、ドラマ鑑賞記録

映画/KUBO 二本の弦の秘密

gaga.ne.jp

 

面白かったー! 

 

私の、Twitterのタイムラインで、絶賛のツイが目につくようになり、これはまず間違いないだろうと思い、名駅のミッドランドスクエアシネマ2まで足を伸ばすことに。

余談ですが、ミッドランドスクエアシネマ2は新しいだけあってきれいでよろしいですね。ビル1Fの牡蠣専門店のランチ、美味しかったです。あと、隣のガレットのカフェのクレープも、映画観たあと語り合うには重くなくいいおやつでした。余談終わり。

映像がとにかくすごかったですね。ストップモーションアニメ自体は、Eテレで子供向けのほのぼのしたショートアニメでよく見かけますが、映画になるほどの長さで、しかもファンタジーでアクション満載となると全く観たことがなく、これCGでも問題ないでしょー! と何度も思った次第です。手作りだからこそ出せる味というのが何か、具体的に指摘は出来ませんが、最初から最後まで丁寧に作り込まれた映像にひたすら圧倒されました。

映画というのは、映像で観客を驚かせないといけない……みたいなことを言った監督さんがいたと思うんですが(思い違いだったら、私の言葉にしといてください)、最初から最後までアメージングでファンタスティックな映像にタコ殴りにされていたような感覚でした。

でも……殴られて……気持ちよかったよ……いいパンチだった。いい涙流したよ。

 

最初、映画観る前の勝手な印象としては、ちょっと高尚な映像作品かなと思ったんですが、ぜんっぜん違って、ファミリーで出かけて家族愛を確認する、いわばクレヨンしんちゃんから下ネタ抜いた王道ファンタジーって感じでしたね。吹き替え矢島晶子さんだし。私は字幕で観ましたけども。難しい展開もテーマもメタファーもなく、ストレートに楽しめる、でも力強く普遍的で分かりやすい物語であったと思います。

 

ご家族でもお一人様でも、誰でも楽しめる映画です。

お子さんとご一緒に行かれる場合は、どうぞ折紙をお忘れなく。観終わったあと絶対折紙ねだられると思いますので……。

(幼児でも大丈夫だと思います。人が死ぬシーンはありますが、残酷な描写はありません)

 

 

どこまでネタバレしていいのかわかりませんので、あらすじは公式見てもらうとして、以下記事たたみますね。

 

 

(以下ネタバレ)

 

これ、発端のストーリーは逆かぐや姫ですよね?

月に帰らなかったかぐや姫。記憶を失うのを拒否して、地上の人との結婚を選んだ。

この映画は、物語の役割とは何かという答えの一つを描いていますが、「物語の出で来始めの祖」をモチーフにしているところが上手いですよね。

始まってすぐお母さんは記憶をなくしたり、元に戻ったりしている。

ただ、クボは母から物語と三味線を教えられ、物語を村で語ることで生計を立ててるっぽい。

クボが村人たちの前で三味線を奏でながら、折紙を使って物語を語るシーン、もうここで全部持っていかれますね。村のおばあちゃんがまたいい味出してる。まさに日本の懐が広く優しい、理想のおばあちゃんそのもの。
おばあちゃんが「ニワトリの下りは入れなければダメ」みたいに言うところ、どんなシーンかと思ったら、コミカルな演出なんですね。確かに、シリアスなストーリー一辺倒よりニワトリとの笑いを入れることで、物語に親しみを感じますよね。

どうやら何度も何度も語られる、人気の物語の模様。ただ、結末だけが語られない。時間切れになっちゃうせいだけではなく、クボは結末を知らないから。

 

それが、クライマックスにつながるわけですね。物語は結末が描かれてこそで、それは自分の手でなさなければならない。

クボが最後の最後で選んだ結末、最初、彼が剣を掴んだ時、あれ? それは違うんじゃないかな? と思ったんですよね。だからその後、三味線を掴んだ瞬間、物語があるべきところへ結着した。あのカタルシスこそ、物語から与えられる最高のものだなと改めて認識しました。

あのシーンがまたお盆なのも素晴らしかったですね。確かにあれはお盆でなければならない。

死んでいった人たちのことを忘れないために物語はある。

死者が帰ってくるお盆だからこそ、あの奇跡に大きな意味がある。

すべて「こうあるべき感動のラスト」のために丁寧に作り上げられたからこそ、クボは物語の語り手として、剣ではなく、三味線を取らなければならなかった。美しい数式のように。

物語が存在する意味、物語の作り方、「物語とは何か」を真摯に追求しつつも、その辺無視しても、ちゃんと少年の成長冒険物語として観ることが出来るのがクボのすごいところだと思います。

 

あ、クワガタの正体ですが、サルとの関係性の描き方が、相棒というより普通に男女の恋愛ものの始まりみたいな感じで(最初は女のほうが反発してるけど、だんだん親しみを感じ始めてるとか)、未亡人の新しい恋か、死んだ夫のことは忘れて……と思ったんですよね。で、クボをクワガタが背負ってるところが「あれ? これってごくごく普通の家族の姿じゃね?」ってところで、志村うしろうしろーってなりました。

と思ったらすぐ正体バレして、あかんフラグやと思ったら…(涙)

そんなところもベタですけど、物語として正しいんですよね。

もっと、ゆっくり家族としてすごさせてあげたかった……と思えるのもまたこの物語にすっかり魅了されてる証拠で。

 

他にも、闇の姉妹たちと姉の関係とか、まだクボが赤ちゃんの時はお母さんはもっと元気で、村人と付き合いがあったのかしらとか、あのガシャドクロなんやねんとか、なんで兜があんなところで半鐘になってんだよとか、色々気になるところもありましたが、そこは観客の想像の範疇なんでしょうか。

 

物語とはとても楽しいもの。そして、クボのような物語の作り手ではなくても、人の中には生まれたときから、それぞれ物語がちゃんと存在している。

物語の尊さを三味線の美しい音色で語りあげた、すごいすごい映画でした。