山盛りごはん三杯

映画、ドラマ鑑賞記録

映画/キングスマン

kingsman-movie.jp

 

「マナーが紳士を作るのだ」

 

いやあ、ひどい映画でした(褒め言葉)。

観てる最中、何度「アホかぼけええ」と心のなかで突っ込んだかわからない。悪趣味にもほどがある。

しかし、コリン・ファースのスタイリッシュなアクションがまあかっこいいことかっこいいこと。予告にも流れるパブや教会での派手なアクションがほんとたまんなかったです。

そして、敵方のガゼルの義足による凶悪なアクションもとても見事で、何度も観たいです。

タロン・エガートンの若さあふれる元気な動きも好きですし、とにかく「男の鎧」と評されたオーダーメイドのスーツがこんなにアクションに映えるとは。

この映画の主人公はやはりスーツなんじゃないかと思います。

スパイものとしてはかなり荒唐無稽なところもありますが、こういう映画こそ「こまけえことはいいんだよ!」で全部突っ切った感じで、そこがまたよい。

だけどただ爽快なだけじゃなく、所々に「うっわ」って嫌悪感も混じらせてきて、観客をただアクションとストーリーに酔わせないよう引っ掛けてくるあたりが、なかなか嫌らしいなあと思います。

でも、ストーリー自体はいたってシンプルで王道のヒーロー物なんですよね。ベテランスパイがかつて新人スパイから自分の命と引き換えに命を助けられたため、ロウアークラスでくすぶっているその息子を一人前の紳士とスパイに育て上げていく(本編中にも「マイ・フェア・レディ」を引き合いにしてるシーンがある)。父と息子、師匠と弟子そして成長と本物の紳士とは何かと若者は学んでいくという、ヒーロー物では王道設定で物語は進んでいくんですよね。なので、そのままだとするっと観られるけど、何も残らないので、思いっきりこっちも引っ叩いてくるようなえぐい描写も入れてくるところが、センスってもんなんでしょうねえ。

花火とか教会とか。

英国紳士によるスーツスタイリッシュアクションだと思って観ると、かなり斜め上に裏切られるので、その点ご覧になる方はレーティングがR15+であることを念頭に置いてご覧になった方がいいかと。

 

以下、ストーリーの核心に触れるネタバレがありますので、未見の方はご注意を

 

 

それにしても、ほんっとひどかったですね!

 

一番ひどいなあと思ったのは、教会のシーン。アクション自体はコリン・ファースのアクションの最大の見せ所で、予告編では襲いかかる敵を次から次へとなぎ倒していくという、爽快なシーンに見えますよね。

 

まさか襲いかかってきてるのは、レイシストとはいえ一般人。その中に殺人マシーンとしての能力を持っているハリーをぶちこんで、全員洗脳できれば……ああ……なりますよね。

ここ何がいやらしいかというと、同性愛否定、中絶否定、黒人差別、ユダヤ人差別(他にもあったかも)という、レイシストてんこもりという、政治的というより一般人にとっての「悪」のメンタリティを持ってる集団なんですよ。もしSNSで発言すれば、一斉に炎上するような思想の人たち。

この人たちが、操られたとはいえハリーによって、しかも映像としては壮絶アクションシーンとしてある意味カタルシスを観客に感じさせながら、全員虐殺される――。

 

いやあ……悪趣味ですよね。おそらく今の社会では憎んでる人が多いだろう思想の持ち主が血を吹き出しながらばったばったと倒されていく。

でも、相手はプロで彼らは思想こそ過激でもただの一般人で、訓練を受け、死線をくぐり抜けてきたハリーに勝てるわけがない。

 

ここのシーンは考えれば考えるほど、気持ち悪さが半端ないんですよね。作品内のテーマの一つに、生まれは関係ない、という差別否定があるだけに

アクションシーンの爽快さとともに差別主義者が全滅していく。ここのシーンって気持ちよさを本当は感じてはいけないものなんですよ。それなのに気持よく見せるよう作られてるのが、ほんっっっと悪趣味で監督てめえって感じでした。

 

 

花火のシーンは、悪趣味ではあるけど、あそこで吹っ飛んでるのは自分たちだけ助かろうとした権力者やセレブばっかりなので庶民としては、ざまあって感じでどーでもいいんですが、そこは思いっきり間抜けた映像にしちゃってるんですよね。

カタルシスを感じさせるよりは笑わせてくる、こういうバランス感覚が悔しいけど好きです。悔しい。

 

あと、世界中の人たちがsimカードでおかしくなって殴りあってたけど、エグジーのお母さんと妹の描写を見ると、ああいう大変な状況になってるおうちもあったんじゃ……と思うと、おっそろしいので考えるのやめときます。エグジーがロキシーに頼んで連絡してもらったから時間稼げたけど、そうじゃないところは……ああダメダメ考えない考えない。

ただ、この手法自体は、赤の他人が殴り合おうとどうでもいい、ではなく、身内が危険という緊迫感を与えてて上手い演出だと思います

 

それでも、ハリーを失ったエグジーが、スーツを身にまとい、世界を救いに行くところはほんと良かったです。王道バンザイ。最強の敵のガゼルとの戦いで、ハリーから伝授された小物(これちゃんと全部使ってましたね)を使って倒すところとか胸熱でした。

まあ、頑張って世界を救ったからご褒美もらっても良かったんじゃないかな(笑)

 

不満ってほどではないですが、ちょっと割を食っちゃった感があるのがロキシーかなあ。

キングスマンはどのキャラも使い捨てではなく見どころがあったんだけど(まさかあいつが最後の最後に足をすくってくるとは!)、ロキシーは出番も多いし、ロウアークラス出身であるエグジーを差別すること無くフェアに扱ってたし、彼女がいなければ時間稼ぎもできなかったんだけど、真面目で優秀なヒロインであるがゆえに、このアクの強いストーリーでは印象が埋没しちゃったのが残念。せっかくの新ランスロットだったのに……。ガゼルと戦うのかと思ったけど、彼女強すぎたし。まっとうなヒロインだと目立てないというのが皮肉。

 

なお、このあと続編も予定されてて、日本も舞台のひとつになるらしいですが、ハリー死んじゃってどうするん? という疑問が。

タロン・エガートンはかわいいし、身体能力すごかったのだけど、やはりコリン・ファースの貫禄は必要だと思うんですよね。まあでも、記憶を失わせる針(名探偵コナンか! と日本中の観客がきっと突っ込んだ)とか、simカードひとつで全世界発狂できるとか、そういう世界観なので、「死んだと思ったか? あれは嘘だ」って蘇ってきても驚きませんけどね。むしろ、脳死に至ってなかったって蘇ってきてもらうのを期待しつつ……